■2019年10月11日 定期公演
狂言 空腕(そらうで)
シテ | 太郎冠者 | 野村 萬 |
アド | 主 | 野村万之丞 |
後見 | 能村 晶人 |
臆病者ながらも空腕立て(見栄を張って偽りの自慢をすること)をする太郎冠者を懲らしめようと、主人は夕方太郎冠者を使いに出す。夜道が怖い太郎冠者は、物陰に怯えながら進むと、あとをつけてきた主人に脅かされ、命を助けてくれと言って主人から預った重代の太刀を差し出し気絶する。冠者は太刀を失ったことをうまく取り繕うため、家に帰り主人に武勇伝を並び立て…。
〈休憩15分〉
能 井筒(いづつ)
前シテ 後シテ |
里女 紀有常ノ娘 |
観世銕之丞 |
ワキ | 旅僧 | 殿田 謙吉 |
アイ | 里人 | 野村 万蔵 |
笛 小鼓 大鼓 |
竹市 学 吉阪 一郎 亀井 忠雄 |
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地謡 | 観世 淳夫 長山 桂三 北浪 貴裕 浅見 慈一 |
小早川 修 西村 高夫 清水 寛二 柴田 稔 |
後見 | 山本 順之 | |
谷本 健吾 |
諸国一見の僧が初瀬詣の途中、大和国石上にある廃墟となった在原寺に立ち寄る。かつてここに住んだという在原業平と紀有常娘の夫婦を偲び弔っていると、古塚に水を供え、回向する里女が現れる。この塚こそ業平の墓だという女に、僧が素性を問うと、未だ世に名を留める業平の物語を語り始める。
昔、隣同士に住む幼き業平と有常娘は、井筒(井戸の上に井桁を設けたもの)の水鏡に互いの影を映して戯れていた。月日は移り、二人は昔のことも恥ずかしく思い出すような年頃になると、互いに歌を詠み交わし、夫婦となった—。
そう語ると女は我こそ紀有常娘だと明かし、井筒の陰に消える。
更け行く夜、僧が旅寝すると、業平の形見の衣を身にまとった有常娘が現れる。人待つ女とも呼ばれ、ひたむきに業平を愛した有常娘。昔に思いを馳せ再び井筒の水鏡に映す姿は、愛しい業平の面影そのものであった。やがて空も白み夜が明けると女の姿は消え、僧の夢も覚めたのであった。
素直で一途な恋心を秋の情趣とともに描いた能。
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