高砂 たかさご
作者 世阿弥
素材 『古今和歌集序聞書』(三流抄)など
季節 春、旧暦二月
場所 播磨国高砂の浦、摂津国住吉
種類 初番目物 脇能
登場人物
前シテ | 老人 | 小牛尉面・大口尉出立 |
後シテ | 住吉明神 | 邯鄲男面・透冠狩衣大口出立 |
ツレ | 姥(老人の妻) | 姥面・水衣姥出立 |
ワキ | 神主友成 | 大臣出立 |
ワキツレ | 従者(2名) | 大臣出立 |
アイ | 高砂の浦の男 |
あらすじ
九州から高砂の浦へとやってきた神主一行の前に、老人夫婦が現われます。夜、老人に言われたとおり住吉へと向かうと、住吉明神が現れ、舞を舞います。
舞台の流れ
- 幕から囃子方が、笛・小鼓・大鼓・太鼓の順に登場し、舞台に入ります。切戸口からは地謡が登場します。それぞれ所定の位置に着きます。
真ノ次第 の囃子で、ワキとワキツレが登場します。肥後国 (今の熊本県)阿蘇の神主] 友成 [ ] は、都へ上京するついでに、途中で播磨国 [ ] (今の兵庫県)の高砂の浦に立ち寄ります。のどかな春の日、九州から船旅で何日かかけて、高砂の浦に着きました。ワキとワキツレは脇座に座ります。真ノ一声 [ ] で、シテとツレが登場します。ツレはほうき、シテはさらえ(木の葉などをかきあつめる道具)を持っています。橋掛リで向かい合って、夕暮れの高砂の浦の様子や、長寿について謡います。そして舞台に入ります。- ワキの友成は、老人夫婦に話しかけ、高砂の松について尋ねます。老人夫婦は、古今和歌集の序にも書かれている、高砂と住吉の松の謂われについて説明します。
- 友成は老人に、高砂の松のめでたいいわれについて、もっと話してほしいと頼みます。シテは着座し、高砂の松の由来を語ります。途中で立ち上がり、落ち葉をかき寄せたり、舞台を回ったりします。
- 老人夫婦は、自分たちが住吉明神であることを明かし、住吉で待っていると告げ、沖の方へと行ってしまいました。前シテとツレは幕へと
中入 [ ] します。 - アイの高砂の浦人が登場し、高砂と住吉の松のいわれについて語ります。
- ワキとワキツレは立って向きあい、謡います。月が出て夜になっています。友成たちは、舟で
摂津 [ ] の住吉へと向かいました。 出端 [ ] の囃子で、後シテの住吉明神が登場します。一ノ松に立って、謡を謡います。住吉明神は、神官たちに舞楽を演奏するように告げます。- 後シテは舞台に入り、
神舞 [ ] を舞います。 - 舞楽の曲名が散りばめられた、めでたい謡に合わせて、後シテは舞台を回りながら舞い続けます。最後に、留メ拍子を踏み、能がしめくくられます。
- シテが幕へと退場します。続いてワキとワキツレが立ちあがり、幕へ向かいます。最後に囃子方が幕へ、地謡が切戸口に入ります。
ここに注目
松が、今でもお正月などに用いられる、おめでたい植物であるのは、ずっと緑のままである
この作品は世阿弥の代表作で、能と言えば、この〈高砂〉を思い出す人も多いと思います。結婚式で謡われる、「高砂や…」の有名な謡は、この曲の待謡です。世阿弥の頃は、「相生[あいおい]」と呼ばれており、世阿弥伝書『三道[さんどう]』では、老体の能の代表作に掲げられています。
(文・江口文恵)
近年の上演記録(写真)
(最終更新:2017年5月)