銕仙会

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その他の催し

能への扉vol.5
ひろがる幽玄の世界in表参道

  • 仕舞「鐘之段」梅若玄祥
  • 仕舞「松虫 キリ」観世銕之丞
  • 一調一管「花重蘭曲」八反田智子、観世元伯
  • 能「松風」谷本健吾

会 場
銕仙会能楽研修所
日 時
  • 2017年11月25日(土)
  • 14時開演(13時20分開場)
    16時30分頃終演予定
入場料
こちらをご覧下さい
主 催
瑠璃の会
谷本健吾・八反田智子・中司由起子

お申込・お問合せ
銕仙会 TEL:03-3401-2285(平日10時〜17時)FAX:03-3401-2313
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解説

中司由起子

仕舞

鐘之段かねのだん 梅若 玄祥
松虫まつむし キリ 観世銕之丞
地謡 武田 祥照
坂 真太郎
西村 高夫
安藤 貴康
〈鐘之段〉

「仕舞」は、能の一部分を謡に合わせて舞う略式の上演形式の一つ。一曲の見どころ・聞きどころを取り上げて舞います。

「鐘之段」は、母親が行方知れずの子を捜し求め、ついに三井寺で再会する物狂能〈三井寺〉の一場面。八月十五夜の明月のもとで、母が三銘鐘の一つ三井寺の鐘を撞くところを舞います。経文の文句を鐘の音に宛てた、掛け合い形式の謡が特徴。

〈松虫〉キリ

能〈松虫〉は、松虫の音を慕って野辺に入りそのまま亡くなった友を偲ぶ男の霊が、懐旧の舞を見せる作品。本日は〈松虫〉の終曲部を舞います。男の霊が野辺で松虫の音を聞いて友を偲びます。虫の音の擬声語を活かした謡に合わせた所作が印象的です。

一調一管 花重蘭曲はながさねらんぎょく

八反田智子
太鼓 観世 元伯

一調一管とは笛と打楽器(一人)による演奏形式で、多くの場合に謡が入ります。本日は、謡のない曲目の演奏で、一噌流笛と観世流太鼓による上演です。〈花重蘭曲〉は「中ノ舞」「鞨鼓」「鷺」「神楽」「早笛」「獅子」という、それぞれに特徴ある曲を連続して演奏します。まさに「花」を重ねていく曲。笛と太鼓の華麗な音色をお楽しみください。

——————〈休憩15分〉———————

能 松風まつかぜ

シテ 谷本 健吾
ツレ 坂口 貴信
ワキ 宝生 欣哉
アイ 山本 則重
八反田智子
小鼓 大倉源次郎
大鼓 亀井 広忠
地謡 鵜澤  光
川口 晃平
坂 真太郎
山崎 正道
梅若 玄祥
西村 高夫
 
後見 観世銕之丞
浅見 慈一
【あらすじ】

所は、秋の津国須磨の浦(兵庫県神戸市須磨区)。旅の僧(ワキ)が由緒ある松を見つけ、浦に住む男(アイ)に由来を尋ねます。男は、この松は昔、須磨に下った在原行平が愛した松風と村雨という姉妹の海女の旧跡であると教え、僧に供養を勧めます。やがて秋の日が早くも暮れたので、僧は塩屋に宿を乞うことにしました。

夕暮れの浜辺では二人連れの海女(シテ・ツレ)が、海女の身の上のはかなさ、辛さを嘆いています。須磨の美しい風情を眺めた海女は、各地の浦の名をあげながら、汐を汲みます。そして桶に映る月影に興じると、桶を車に乗せて塩屋へ帰って来ました。

僧は海女たちに宿を願います。塩屋に通された僧が、行平の詠んだ歌や松風村雨の話をすると、海女たちは涙を流し、自分たちはその松風村雨の亡霊であると明かします。そして行平を慕って、行平との恋の思い出を語ります。

松風の霊は、都に戻り亡くなった行平の形見の烏帽子と狩衣を身にまとい、心狂おしく行平を懐かしんで舞を舞います。そして行平の詠んだ歌

「立ち別れ、因幡の山の峰に生ふる、待つとし聞かば今帰り来ん」

を口にし、松の立ち木を行平の姿と見なして松に寄り添いすがりつきます。姉妹の霊は供養を願うと消え失せ、跡には松吹く風の音が響くばかりでした。

【見どころ】

見どころの多い能です。どの場面も情趣あふれる内容で、特色ある謡の旋律やリズムで、囃子にも工夫がなされています。能楽師にとって大事な作品の一つといえます。

                

〔秋の美しい須磨の風情〕

在原行平は、色好みで有名な業平の兄にあたる平安時代初期の貴族。行平は須磨で涙にくれつつ侘びしい暮らしをしていた時に、

「わくらはに問う人あらば須磨の浦に藻塩たれつつ侘ぶとこたへよ」

と詠みました(『古今和歌集』)。この歌は〈松風〉に引かれており、前半のテーマソングといえます。行平の須磨滞在は、『源氏物語』で光源氏が須磨に下る「須磨」の巻に踏まえられています。〈松風〉には、海女たちの登場場面や須磨の風情を海女たちが謡う場面を中心に、『源氏物語』ゆかりの言葉がたくさん出てきます。「心づくしの秋風・月の顔・友千鳥・四方の嵐」などです。それらの言葉によって作られた『源氏物語』「須磨」の巻の世界が〈松風〉に映し出されています。おぼろげな月や空を飛ぶ雁、千鳥の群れといった視覚、かすかに聞こえる海人の声や田鶴の騒ぐ声、嵐の音といった聴覚、そして野分や汐風、肌寒さといった触覚までにも訴えてくるような、秋の夕暮れの浜辺を想像しながらご覧ください。

〔海女たちの汐汲〕

海女たちが、秋の夕暮れの浜辺を帰途につく場面も見どころです。海女たちは月下に汐を汲み、汐の入った桶を車に乗せて引きます。この場面の「ロンギ」という謡は、複雑な節の聞きどころでもあります。「千賀の塩竃・阿漕が浦・伊勢の海・二見の浦・鳴海潟・鳴尾・芦の屋」と各地の海辺(歌枕)が謡われる「物尽くし」の前半と、桶にも月影が映っていると海女たちが喜び合う後半から成ります。この「ロンギ」は「昔の藤永」という能の中で謡われていたのを、〈松風〉に転用したもの。美しい汐汲み車の作リ物(舞台装置)も出されます。

                
〔行平への恋慕〕

松風の霊が行平の形見の烏帽子と狩衣を抱え、恋心をしみじみと語ります(舞台では狩衣を「長絹」という能装束で表します)。形見は愛する人を偲ぶ大切なものですが、一方でそれは恋人を忘れさせないものでもあり、形見を見つめるたびに思いは深くなっていきます。形見を捨てようとするも、やはり捨てることができず……と煩悶する松風の霊の演技にご注目ください。そして形見をまとった松風の霊は、心を高ぶらせて松の木を行平の姿と見なしてしまいます。ここでは、妹の村雨の霊が重要な役を果たす場面もあります。

           
〔松風の舞〕

松風の恋慕による狂乱を表現する舞です。〈松風〉には二つの舞(「中ノ舞」と「破ノ舞」)があり、二つの舞の間には行平の歌「立ち別れ……」が挟み込まれています。この歌は「待つ」と「松」が掛詞、「わたしはあなたが待っていると聞いたなら、すぐに帰ってこよう」という意。行平の愛の約束の歌であり、この歌と形見があるからこそ、姉妹は亡霊となっても行平恋しさに涙するのでしょう。「破ノ舞」では、思いを爆発させるような型が、印象的な笛の音に合わせて舞われます。その後の謡に合わせた舞と同様に、行平=松ということが強調される演出です。

〔松風の成立〕

〈松風〉には複雑な成立過程があります。田楽の役者の喜阿弥(世阿弥の父観阿弥とほぼ同世代)が作った「汐汲」をもとに、世阿弥が大改定を加えて作った能とであると考えられています。しかも海女たちの登場場面には観阿弥の作った謡をも含んでいます。

(中司由起子)

■入場料

一般 5,000円
学生 2,500円
最後列ベンチシート及びパイプ椅子(30席限定)
※受付は電話申込のみ
+1,000円

※全席自由。終演後講座料金込み。
※客席は階段状の畳敷きです。

公演情報
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