銕仙会

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敦盛 (あつもり)
 

作者  世阿弥
素材  『平家物語』巻九 敦盛最期
季節  夏
分類  二番目物・修羅物

 

登場人物・面・装束

前シテ  男  直面・水衣男出立
後シテ  平敦盛  十六面・修羅物出立
前ツレ  男  直面・水衣男出立
ワキ  蓮生法師  着流僧出立
アイ  里の男  肩衣半袴出立

 
あらすじ
 熊谷直実は源平の合戦で平敦盛を討ち取ったこと後、世の無常を感じ、出家して蓮生法師となっていました。敦盛を弔うため合戦が行われた須磨の一の谷に赴くと、風雅な笛を吹く草刈男が現れます。その夜弔いを行うと、蓮生の夢に平敦盛の霊が現れます。
 
舞台の流れ

  1. 囃子方が橋掛リから、地謡が切戸口から登場し、所定の位置に座ります。
  2. 次第の囃子でワキの蓮生[れんせい]法師が登場します。実は、源平の合戦で平敦盛を討ち取った熊谷直実が出家したのがこの法師でした。一の谷で敦盛の菩提を弔おうと、須磨の浦の一の谷へ向かいます。舞台を歩き、一の谷に到着したところで、笛の音が聞こえてきます。
  3. 次第の囃子で草刈男たち(シテ・ツレ)が登場します。手には刈り草を持ち、舞台に入ります。
  4. 蓮生は草刈男たちに声をかけます。先ほど聞こえてきた笛を吹いていたのは、草刈男の一人でした。どうして草刈男のような身分の低い者が風雅な笛を演奏できるのかと尋ねると、草刈男は樵歌牧笛[しょうかぼくてき]の故事について話します。この間にツレの草刈男たちが退場します。
  5. ほかの草刈男たちが帰ったにもかかわらず、一人(前シテ)だけが蓮生の前に居残っています。不思議に思い、蓮生が尋ねると、その男は、自分は敦盛のゆかりの者で、十念[念仏を十回唱えること]を授けてほしいと言います。蓮生が念仏を唱えると男は、蓮生がいつも弔っている相手は実は自分なのだと、自身が敦盛の化身であることをほのめかし、消えてしまいます。
  6. 里の男(アイ)が一の谷の合戦で熊谷直実に討たれた平敦盛の話を語ります。
  7. 夜、蓮生は敦盛の菩提を弔うことにします。
  8. 一声の囃子で、幕から後シテの平敦盛が登場します。
  9. 敦盛は蓮生法師に放しかけます。蓮生の弔いを喜び、成仏するために懺悔の物語を語ることにします。
  10. 敦盛は栄華を極めた平家の一門が、一日でしぼんでしまう朝顔の花のように、あっという間に没落し、寿永二年の秋に都落ちし、翌年には須磨の浦の一の谷へと落ちのびたことを語りつつ舞い、その末路の悲しさを嘆きます。
  11. 寿永三年二月六日の夜、平家方は今様や朗詠など、管弦の催しをして遊びます。敵の陣まで聞こえてきた笛の音は、敦盛が吹いたものでした。敦盛は討ち死にする前の晩の宴の様子に思いを馳せながら、中ノ舞を舞います。
  12. 逃げる平家の舟に乗り遅れてしまった平敦盛が、岸辺で熊谷次郎直実に討たれてしまった様子が語られます。敦盛の霊は生前自分を討った熊谷が蓮生法師となり、念仏を唱えてくれることに対し、最終的にはともに成仏できるはずだから、蓮生に自分のことを弔ってほしいと頼み、留メ拍子を踏み、幕へと退場します。続いて、ワキ・囃子方が退場し、地謡は切戸口に入ります。

 
ここに注目
 世阿弥は、能作について著した伝書『三道』中の軍体[ぐんたい]の能[軍人を主人公とした能]についての条で、「源平の名将の人体の本説ならば、ことにことに平家の物語のままに書くべし」 と述べています。世阿弥の修羅能作品の多くが、平家物語の後日談のように書かれている点からしても、理論と実践が合致していると言えましょう。
 世阿弥が能の題材とした平家の武将の中で、平敦盛は特に若い武将です。詞章の完成度が高く、世阿弥が若い時に作ったものではなさそうなこともあり、〈敦盛〉は自作自演のためではなく、世阿弥が息子たちのために作った曲かもしれないという説も提唱されています。
 
 
(文・江口文恵)

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