銕仙会

銕仙会

曲目解説

(おきな)

◆別名

 神歌(かみうた)  ※謡のみの形で上演される際の名称。

◆役柄

シテ 大夫
ツレ 千歳(せんざい)
狂言方 三番叟(さんばそう)
狂言方 面箱持(めんばこもち)
※狂言方の流儀により、「三番叟」は「三番三」とも書きます。

概要

《翁》には、演劇としてのストーリーはありません。本曲は、天下泰平・国土安穏への祈りを謡と舞によって表現するという、神事的儀式演目となっています。

この神事において御神体となるのは、老人の笑顔をかたどった白黒二つの仮面「翁面」です。本曲の前半では、白い翁面「白式尉」をかけた大夫(シテ)の荘重な謡と舞による国土平安への祈念が、また後半では、黒い翁面「黒色尉」をかけた三番叟(狂言方)の軽快な舞による安寧への予祝が、それぞれ神事の中核をなしています。このほか、白式尉の舞に先立って大地を踏み鎮める千歳(ツレ)の舞や、黒色尉の舞に先立って躍動的な所作をしつつ座を清める三番叟の舞なども含め、いわば“芸”の力によって清浄な空間を創出し、幸福を招くことが、この神事の本旨となっています。

舞台の流れ

0 開演に先立ち、舞台と演者一同を清める儀式が行われます。

開演前、幕の奥には御神体である二つの翁面を祀る祭壇が設けられ、出演者一同は厳粛な心で開演の時刻を待ちます。本曲に参加する出演者は、その全員が神事奉仕の役と見なされ、囃子方や地謡までもが素袍上下・侍烏帽子の正装姿に身を包みます。

チューニングにあたる「お調べ」が終わると、舞台と楽屋とが切火によって清められ、祭壇の前では出演者一同が御神酒・洗米・粗塩を頂いて身を清める儀式を行います。

1 演者一同が登場します。

清めの儀式が済むと、御神体である翁面を納めた「面箱」を捧げ持つ面箱持(狂言方)を先頭に、出演者全員が舞台へと進みます。神事の主宰者である大夫(シテ)は舞台正面に進み出て深々と礼をしたのち定座につき、大夫のもとに面箱が据えられます。面箱持が翁面の封を解いて大夫の前に安置すると、出演者全員が定座へ進みます。

2 大夫は、総祈願の謡を謡います。

定座についた笛は清々しい旋律を吹いて神事の開始を知らせ、次いで三丁の小鼓が爽やかに鼓を打ちはじめます。大夫は翁面の前に坐したまま「とうとうたらりたらりら…」という神聖な呪文を唱えると、神事冒頭の総祈願として、国土の長久と人々の安寧を祈る謡を謡います。

3 千歳が舞を舞って座を清めます(〔千歳ノ舞〕)。

大夫による総祈願の謡が終わると、露払いの役である千歳(ツレ)が舞台中央へと進み出ます。千歳は謡を謡って世界の永遠性を讃えると、笛・小鼓の演奏に合わせて軽やかに大地を踏み鎮めつつ颯爽と舞い、御神体である翁面の動座に先立って座を清めます。

4 大夫は面をかけ、御祈祷の謡を謡って祝福の舞を舞います(〔翁ノ舞〕)。

千歳の舞が終わると、御神体である白い翁面「白式尉(はくしきじょう)」をかけた大夫が舞台中央へと進み出、天下泰平を願う御祈祷の言葉を高らかに唱えます。

その後、笛と小鼓とが奏される中、大夫は舞台の隅々を踏み固め、袖を翻して荘重厳粛な舞を舞い、安寧への祈りと喜びを体現します。

5 大夫・千歳は退場します。(翁帰リ)

舞い終えた大夫は面をはずし、翁面を面箱の内へと奉安します。その後、大夫は再び舞台正面に進み出て深々と礼をすると、小鼓の演奏に見送られつつ退場します。続いて千歳も退場します。

6 三番叟が舞を舞って座を清めます(〔揉之段(もみのだん)〕)。

やがて、笛・小鼓に加えて大鼓も演奏に加わり、それまで後方に控えていた三番叟(狂言方)が颯爽と本舞台へ進み出ます。三番叟は、笛・小鼓・大鼓の演奏に合わせて大地を踏み鎮めつつ躍動的な舞を舞い、翁面の再度の動座に先立って改めて座を清めます。

7 三番叟は面をかけ、祝福の舞を舞います(〔鈴之段〕)。

その後、御神体である黒い翁面「黒式尉(こくしきじょう)」をかけた三番叟は、面箱持との問答ののち、舞に用いるための鈴を受け取ります。三番叟は高らかに鈴の音を響かせつつ、笛・小鼓・大鼓の演奏に合わせて祝福の舞を舞います。

8 演者一同が退場します。(終)

舞い終えた三番叟は面をはずし、翁面と鈴とを面箱の内に奉安します。その後、三番叟は退場し、次いで出演者一同が退場します。

但し、この直後に引き続いて能が演じられる場合、囃子方や地謡は舞台に残り、そのまま能を始めます。この形式を「翁附(おきなつき)」といい、きわめて祝言性の高い、儀式的な演出となります。

(文:中野顕正  最終更新:2019年12月29日)

舞台写真

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