銕仙会

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曲目解説

鶴亀(つるかめ)

◆別名

 月宮殿(げっきゅうでん)  ※他流での名称。

◆登場人物

シテ 皇帝
ツレ
ツレ
ワキ 大臣
ワキツレ 臣下 【2人】
アイ 官人
※鶴・亀は、子方がつとめる演出もあります。

◆場所

 唐土 皇帝の宮殿

概要

新年。唐土の都、金銀珠玉によって飾り立てられた帝王の宮殿では、皇帝(シテ)が大臣たち(ワキ・ワキツレ)の前に出御し、拝賀の儀式が行われていた。やがて、吉例として庭上に召し出され、慶賀の舞を舞う鶴(ツレ)と亀(ツレ)。その面白さに感じ入った皇帝は、自らも玉座から下り立って舞楽を舞うと、一同は長寿万歳を喜ぶのだった。

ストーリーと舞台の流れ

1 アイが登場します。

ここは、中華帝国の都。天下を治める皇帝の仁徳に充ち満ちた、栄華を誇る帝都である。新年を迎えた今日、その威光はいっそう輝きを増し、下は人民に至るまで、青陽の春の訪れを祝福していた。
間もなく、廷臣たちの拝賀の時刻。王宮に使える官人(アイ)は準備を進めつつ、皇帝の出御の時を待つ。

2 シテ・ワキ・ワキツレが登場します。

やがて出御の時刻。皇帝(シテ)は、大臣たち(ワキ・ワキツレ)の並み居るなか、悠々と玉座に登ってゆく。永遠に沈むことなき、日月の輝光を眺める皇帝。その階下には、数限りない官人たちが、袖を連ねて帝を礼拝する。金銀の砂を敷きつめた庭に、錦や宝石の数々で飾り立てられた楼閣。鶴や亀がたたずむ池のさまは、さながら仙境・蓬莱山に異ならぬ。そんな、栄華を極めたこの宮殿が体現する、わが皇帝陛下の威徳なのであった。

3 ワキの奏請を受け、ツレ(鶴・亀)が登場して舞を舞います(〔中之舞〕)。

新春には、鶴と亀とを舞わせるのが毎年の吉例。大臣は、今年もそれを行わせようと奏請する。やがて庭上に召し出された、千年の鶴(ツレ)と万年の亀(ツレ)。鶴亀は、皇帝の御前において、優雅に舞を舞いはじめる。

4 シテは、自らも舞を舞います(〔楽(がく)〕)

千年の松が湛える、深い緑。その色にも似た緑毛の亀が舞い遊べば、丹頂の鶴もまた、千歳の寿命を皇帝に捧げて祝福する。庭上に並び立ち、帝を拝する鶴と亀。その姿に、わが皇帝陛下もご満悦の様子。機嫌を良くした皇帝は、自らもまた玉座から下り立つと、舞楽の袖を翻しはじめた――。

5 シテは、めでたく舞い納めます。(終)

ゆったりと舞を舞う皇帝。翻る白い袂はさながら月の都の如く、柔らかく軽やかなさまはあたかも四季の花々のよう。秋の紅葉、冬の雪をも思い起こさせる、舞楽の装束。そんな麗しい衣を身にまとい、皇帝は、大臣たちの奏でる音楽に乗って舞い戯れる。山河草木、国土のすみずみに至るまで、いつまでも豊かにと願う皇帝の舞。その姿に、還御の玉輿を担う官人たちまでもが、わが聖主の長寿万歳を喜ぶのだった。

(文:中野顕正  最終更新:2023年12月11日)

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