銕仙会

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銕仙会上演記録

■2015年04月10日 定期公演

─銕仙会90周年記念─

  • 能「三山」鵜澤久
  • 狂言「骨皮」石田幸雄
  • 能「春日龍神」長山桂三
会 場
宝生能楽堂(全席指定)
日 時
  • 2015年4月10日(金)
  • 午後6時開演(午後5時30分開場)

銕仙会定期公演〈4月〉

能 三山みつやま

前シテ
後シテ
里女
桂子ノ霊
鵜澤  久
ツレ 桜子ノ霊 鵜澤  光
ワキ 良忍聖 殿田 謙吉
ワキツレ 従僧 大日方 寛
梅村 昌功
アイ 所ノ者 高野 和憲
   
一噌 庸二
小鼓 田邊 恭資
大鼓 佃  良勝
地謡 観世 淳夫 清水 寛二
谷本 健吾 浅井 文義
北浪 貴裕 観世銕之丞
泉 雅一郎 西村 高夫
     
後見 野村 四郎
長山禮三郎

 洛北大原の良忍上人が融通念仏を広めるため大和国に赴く。

 そこへ現れた里女は、畝傍(うねび)の里の桜子と耳成(みみなし)の里の桂子が香久山に住む男をめぐって争い、敗れた桂子が耳成の池に身を投げたのだという大和三山の話を上人に語って聞かせ、実は自分こそ桂子なのだと明かして消え失せる。

 やがて上人の弔いに桜子と桂子の霊が現れた。桂子は桜子を妬み責め立てて後妻打ちを見せるが、次第に恨みも晴れ、僧に回向を頼むと、ともに姿を消すのだった。

 観世流では昭和60年に八世銕之丞によって復曲された能。

さらに詳しい解説は<こちら>から

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《90周年によせて》

三月定期公演の「求塚」は六世銕之丞華雪による復曲でしたが、この「三山」は昭和60年に二十五世観世左近師より観世流の現行曲に入れるべく正式に依頼され、父である八世銕之亟によって復曲されました。
 復曲に際しては実技研究の第一人者、故横道萬里雄氏を始め、当時の舞台を支えていた方々との意見交換、共同作業の中で形作られ、現代に生きる能として再生されました。

父はこの曲を宝生流とはまた趣の異なった曲に仕上げようとしたようです。特に後半部分は桂子と桜子の感情のぶつけあいから一転、万葉の大らかな世界のうちに終わるようにしたいと思ったようです。

 もともとはシテが留拍子を踏んで終わる終曲部分も地謡の中でシテとツレが幕へ消え、ワキ一人が舞台に残るという形に変えています。

 又、クセの後半にも工夫があり、中入の形が二通りあります。一つは桂子が入水したところで中入する形、もう一つは続けてワキに自分を名帳に入れて欲しいと願って中入する形です。

 謡にも宝生流でよく使われる節扱いを導入したり、翔の最後に金剛流の「善知鳥」の小書「組落シ」の手法を採り入れて印象的に仕上げるなど、技術的にも高度な出来で、父の主張が随所に見られます。

 万葉の大らかな空気感と、現代の観客を意識した変化のある興趣あふれた曲です。

観世銕之丞

〈休憩10分〉

狂言 骨皮ほねかわ

シテ 新発意 石田 幸雄
アド 住持 野村 万作
小アド 檀家 月崎 晴夫
中村 修一
岡  聡史

 住持から寺を譲り受け、檀那あしらいの大切さを教えられた新発意(新米の僧)は傘を借りに来た男に住持秘蔵の傘を貸してしまう。そういう時は「嵐で骨は骨に、紙は紙へと吹き破れてしまった」と言って上手く断るものだと叱られ、新発意は次に馬を借りたいと訪ねて来た男に…。

能 春日龍神かすがりゅうじん

前シテ
後シテ

龍神
長山 桂三
ワキ 明恵上人 則久 英志
ワキツレ 従僧 御厨 誠吾
舘田 善博
アイ 社人 深田 博治
   
寺井 宏明
小鼓 亀井 俊一
大鼓 大倉慶乃助
太鼓 林 雄一郎
地謡 青木 健一 浅見 慈一
安藤 貴康 小早川 修

谷本 健吾

柴田  稔
野村 昌司 馬野 正基
     
後見 清水 寛二
岡田 麗史

 仏跡を訪ねるため、唐・天竺に渡ることを志す明恵上人。暇乞いのため上人が春日神社に参詣すると、出迎えた宮司が上人を説き伏せ、入唐渡天を思い留まらせる。実は宮司は春日明神の告げを知らせに来た時風秀行であったのだ。

 やがて大地が鳴動し、空を埋め尽くすほどの眷属を引き連れ、八大龍王が現れた。龍王は釈迦の誕生、霊鷲山での説法、入滅の様を次々と上人の眼前に再現してみせる…。

 明神の威徳を壮大なスケールで描いた能。

さらに詳しい解説は<こちら>から

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《90周年によせて》

これは二月定期公演の「大会」と同じく釈迦の世界が表現されていますが、何と言っても奈良の都の大らかさ、光が満ちあふれた明るい童話的世界が描かれています。クセの部分では奈良が都として形成されて行く中で、七大寺を始め、大寺社が次々と建立されて行った時代の迫力を目の当たりにするような、そしてそれらを春日の龍神が守護するという大いなるエネルギーを感じるものです。曲としては切能(五番目物)の持つテンポの良さ、歯切れの良い詞章、その明快な表現、そういったカラッとした裏表のない所もこの曲の魅力であり、若い役者が必ず習得すべき能として位置づけられているともいえます。

観世銕之丞

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